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後遺障害による労働能力喪失率が制限される場合

後遺障害による労働能力喪失率は、後遺障害等級認定表に等級ごとに記載されている基準数値どおりで認定されて、後遺症逸失利益を算定されることが多いです。

労働能力喪失率の基準値

1級:100%2級:100%3級:100%4級:92%5級:79%
6級:67%7級:56%8級:45%9級:35%10級:27%
11級:20%12級:14%13級:9%14級:5% 

しかし、基準値より低い喪失率が認定されたり、労働能力喪失自体が否定されて後遺症逸失利益が認められないこともあります。とくに以下の後遺障害について労働能力喪失率の制限が問題になります。

  1. 外貌醜状
  2. 脊柱変形
  3. 鎖骨変形
  4. 腸骨採取による骨盤骨変形
  5. 腓骨の偽関節
  6. 1cm以上3cm未満の下肢短縮
  7. 歯牙障害
  8. 嗅覚・味覚障害
  9. 脾臓喪失

1.外貌醜状の労働能力喪失率制限

外貌醜状とは、頭部、顔面部、頸部などの、上肢および下肢以外の日常露出する部分に瘢痕、線状痕、組織陥没が残った状態をいいます。

外貌醜状の後遺障害は「外貌に著しい醜状を残すもの」は「7級」(基準値:労働能力喪失率56%)、「外貌に相当程度の醜状を残すもの」は9級(基準値:労働能力喪失率35%)、「外貌に醜状を残すもの」は「12級」(基準値:労働能力喪失率14%)で評価されます。

以前は、男性の外貌醜状の等級と女性の等級は別に規定され、女性のほうが重い等級評価をされていましたが、等級改正により、男女の区別なく同じ等級が認定されることになりました。

醜状痕は、身体の機能を制限するような後遺障害ではなく、労働能力に直接影響することは考えづらいので、保険会社との示談交渉の段階では、外貌醜状による逸失利益を否定されることが多いです。労働能力喪失はないとして逸失利益を否定する裁判例も少なからずあります。

しかし、女性で芸能人、モデル、ホステスなどの容姿が重視される職業に就いている場合、ファンや店の客足が減るなどの影響が出るといえます。その他の職業でも、醜状痕を原因として職場内で配置転換されたり、職業選択の幅を狭められるなどの形で労働能力に直接影響がある場合もあります。

また、直接的な影響はなくても、対人関係や対外的な活動に消極的になるなどの形で、間接的に労働能力に影響する場合もあります。したがって、逸失利益を肯定する裁判例もかなりあります。

裁判例の傾向を見ると、被害者が女性で等級が高い場合(7級や9級)には、労働能力喪失率を基準値よりも限定したうえで、逸失利益を肯定するものが多く、少数ながら基準値どおりの喪失率を認めるものもあります。

被害者が女性で等級が低い場合(12級)には、逸失利益を否定するものがやや多いです。逸失利益を否定された場合でも後遺症慰謝料を基準より増額認定するものがあります。

これに対し、被害者が男性の場合には、女性に比べて逸失利益を否定する裁判例がかなり多いです。

外貌醜状における逸失利益の有無・労働能力喪失率の認定は、被害者の年齢、性別、職種、醜状の内容・程度、現在従事している職業や将来の職業への影響、対人関係円滑化への影響などの事情を考慮して判断されます。

被害者の方は、逸失利益や実態に即した労働能力喪失率の認定を受けるために、これらの事情を具体的かつ詳細に主張立証する必要があります。

2.脊柱変形の労働能力喪失率制限

脊柱変形の後遺障害は、「6級」、「8級相当」、「11級」で評価されます。労働能力喪失率の制限が問題となるのは、最も軽い「11級」(基準値:労働能力喪失率20%)の場合が多いです。

医師の中には11級程度の脊椎圧迫後の変形では、労働能力の実質的喪失はほとんどないに等しいと言う人もいます。脊柱変形(11級)について、労働能力喪失を完全に否定した裁判例も少数ながらあります。

また、基準値である20%未満の喪失率しか認定しなかった裁判例はかなりあります。

実際の喪失率認定は、年齢、性別、職種、現実の就労制限の有無、骨折の部位・程度、脊髄への圧迫の有無、腰痛などの神経症状の有無、固定術の方法、変形の進行可能性、などの様々な事情を総合的に考慮して判断されます。

被害者の方は、実態に即した喪失率の認定を受けるために、これらの事情を具体的かつ詳細に主張立証する必要があります。

3.鎖骨変形の労働能力喪失率制限

鎖骨変形の後遺障害は、「12級」(基準値:労働能力喪失率14%)として評価されます。

鎖骨が変形しても、一般的には肩関節の機能や日常動作に大きな影響はないといわれていることから、労働能力喪失がないとして逸失利益を否定した裁判例が多いです。

しかし、肩関節の機能障害や日常生活上の動作に全く影響しないというわけではないことから、軽度の機能障害でも労働能力への影響が大きい職業の被害者については労働能力喪失が認められる余地があります。また、見た目が悪くなることから、容姿が重視されるモデルなどの職業の被害者についても認められる余地があると思います。

実際に労働能力喪失を認めた裁判例もあり、その場合の労働能力喪失率は10~14%を認定するものが多いです。

また、機能障害がなくても、神経症状(痛みの残存)がある場合に労働能力喪失を認めた裁判例もあります。ただし、神経症状は時間の経過とともに減少することが想定されるので、労働能力喪失を認められても10年程度に喪失期間を限定されると思われます。

鎖骨変形障害の労働能力喪失の有無や喪失率の認定は、肩関節の機能障害の有無、痛みの残存の有無、職種・就労状況、現実の収入の変遷、年齢、将来の職業選択の際の不利益、などの様々な事情を総合的に考慮して判断されるといえます。

4.腸骨採取による骨盤骨変形の労働能力喪失率制限

腸骨からの採骨は、骨片を骨欠損部の補填や骨癒合促進のために他の部位に移植するためになされます。腸骨からの採骨による骨盤骨の変形障害は、「12級」で評価されます。

医師の中には骨移植用採骨後の骨盤変形における労働能力の喪失はほとんどないに等しいと言う人がいます。裁判例も、労働能力喪失(基準値:労働能力喪失率14%)を完全に否定したものが多く、後遺症逸失利益を認められることは少ないのが現状です。

しかし、変形自体が労働能力に影響しないとしても、採骨を受けた部分について痛みを生じることがあることから、神経症状として労働能力喪失が認められる余地はあります。

また、労働能力喪失が認められず逸失利益が否定されるとしても、体の健常部が傷つけられることから、慰謝料の加算事由として考慮されることがあります。

5.腓骨の偽関節の労働能力喪失率制限

腓骨とは、足のすねの2本の骨のうち、外側の細いほうの骨です。太いほうの骨は脛骨です。偽関節とは、骨折部の治癒機転が止まって、骨がくっつかずに異常可動域を示しているものをいいます。

腓骨の偽関節は、①「脛骨および腓骨の両方の骨幹部等に偽関節を残し常に硬性補装具を必要とする」ものは「7級」(基準値:労働能力喪失率56%)、②「脛骨および腓骨の両方の骨幹部等に偽関節を残すが常に硬性補装具を必要とはしない」ものは「8級」(基準値:労働能力喪失率45%)、③「腓骨の骨幹部等に偽関節を残す」もの(腓骨単独の偽関節)は「12級」(基準値:労働能力喪失率14%)として評価されます。

障害等級が改正される前は、①②は「7級」③の腓骨単独の偽関節でも「8級」とされていましたが、腓骨の偽関節は障害等級改正により等級が引き下げられました。

腓骨が骨折しても、脛骨が強大な支えになるために、歩行・立位も可能といわれています。また、すねにかかる負荷のうち腓骨が支えるのは6分の1程度といわれています。したがって、腓骨の偽関節は労働能力に影響を及ぼさないという医師の見解もあります。

しかし、腓骨偽関節により足関節の変形、不安定性、亜脱臼、運動症や疼痛が生じることがありますし、6分の1程度とはいえ、すねの負荷を支える役割があります。また、腓骨が支持機能に与える影響が大きくないことを考慮して等級改正により、腓骨偽関節の障害等級が引き下げらたことから考えても、基本的には基準値どおりの労働能力喪失が認められるべきといえます。

ただ、疼痛もなく、歩行・立位などの日常生活に影響を及ぼさず、仕事の内容がほとんど移動を伴わないデスクワーク中心の場合などには基準値よりも低めの労働能力喪失率が認定されることもあり得ます。

逆に、下腿(すね)に対する負荷が大きい職業(運送業、建設業、土木業など)の場合、基準値よりも多めの労働能力喪失率が認定されることもあり得ます。

下肢の後遺障害の認定基準

6.「1cm以上3cm未満」の下肢短縮の労働能力喪失率制限

1cm以上(3cm未満)の下肢短縮の後遺障害は「13級」(基準値:労働能力喪失率9%)として評価されます。

医師の中には、下肢長測定の際の1cmは測定誤差の範囲であり、また、関節の機能障害がない限り左右の脚長差2.5cm以下では明確な歩行障害を示さないと言う人もいます。

裁判例の中にも、労働能力喪失を否定したり、基準値よりも低めに労働能力喪失率を認定するものがかなりあります。

結局のところ、いかなる喪失率を認定するかは、被害者の年齢、職業、下肢短縮の程度、被害者が従事する仕事への具体的影響などを考慮して個別具体的に決するしかありません。

下肢短縮の程度が1cm程度で歩行障害などがなく、仕事の内容が移動を伴わないデスクワーク中心の場合は、労働能力喪失が否定されたり、基準値よりも低めの喪失率が認定されやすいと思います。

逆に、下肢短縮の程度が3cm近くあって、仕事の内容が肉体作業を主とするもので、左右のバランスが要求される場合(スポーツ選手、体育教師、大工や鳶職、長時間の歩行を要する外回りの営業マンなど)には、基準値よりも高めの労働能力喪失率が認定されることがあり得ます。

7.歯牙障害の労働能力喪失率制限

歯の喪失や欠損による後遺障害は、14歯以上が「10級」(基準値:労働能力喪失率27%)、10歯以上が「11級」(基準値:労働能力喪失率20%)、7歯以上が「12級」(基準値:労働能力喪失率14%)、5歯以上が「13級」(基準値:労働能力喪失率9%)、3歯以上が「14級」(基準値:労働能力喪失率5%)として評価されます。

歯を喪失したり欠損しても、義歯を入れたり修復すれば歯の機能は回復するので、労働能力への影響は通常はないと考えられるので、裁判例は労働能力喪失がないとして逸失利益を否定するものがほとんどです。

ただ、歯が修復されたとしても、言葉の発音に障害が生じることがあり、また、歯を食いしばって力を入れるような肉体労働的側面が強い職業(スポーツ選手など)では不都合が生じることが考えられます。

したがって、被害者の職業や仕事への支障の内容・程度などの事情によっては、労働能力喪失を認められる可能性があります。少数ながら、労働能力喪失を認定した裁判例もあります。ただし、労働能力喪失を認められる場合でも、喪失率は基準値よりもかなり低く認定されると思われます。

労働能力に影響がなく逸失利益を否定されても、歯の喪失・欠損により、入歯の手入れなどの不便、治療のため健康な歯まで削られる苦痛、味覚への何らかの影響などが生じるので後遺障害慰謝料を基準額よりも増額されることがあります。

8.嗅覚・味覚障害の労働能力喪失率制限

嗅覚障害は、嗅覚脱失が「12級相当」(基準値:労働能力喪失率14%)、嗅覚の減退が「14級相当」(基準値:労働能力喪失率5%)として評価されます。

味覚障害は、味覚脱失が「12級相当」、味覚の減退が「14級相当」として評価されます。

裁判例は、労働能力喪失を否定するものと肯定するものに分かれます。

具体的な認定は、性別、年齢、減収の程度および嗅覚・味覚障害の職業に対する具体的影響などの事情を考慮してなされます。とくに、被害者の職業への影響が重視されます。


調理師、料理人

嗅覚・味覚は、料理の味付けや材料の見極めなどに重要な働きをするので、嗅覚・味覚障害は、料理を職業とする被害者の労働能力に大きな影響を及ぼします。したがって、労働能力喪失が認められやすく、場合によっては基準値以上の喪失率が認められることもあり得ます。


主婦

料理は家事労働の重要な部分を占めているので、嗅覚・味覚障害は、主婦の労働能力に大きな影響を及ぼします。また、嗅覚は、ガス漏れや煙を探知する役割もあるので、嗅覚障害があると本人や家族の日常生活が危険にさらされることになります。したがって、基準値どおりの労働能力喪失が認められやすいです。


労働能力喪失が認められず逸失利益が否定されるとしても、日常生活に何らかの支障を来たし、生活の質も低下することから、慰謝料の加算事由として考慮されることがあります。

9.脾臓喪失の労働能力喪失率制限

脾臓喪失は「13級」として評価されます。平成18年に等級が改正される以前は「8級」として評価されていました。

医学的には、脾臓を取り除いても、その機能は、すべて骨髄、肝臓、リンパ節が代償するので人体に影響がないといわれているため、労働能力に影響がないとも思われます。

しかし、脾臓には①血球の産生、②細胞や異物の破壊処分、③血球成分の貯留、などの機能があることが明らかにされています。また、脾臓の摘出により感染防御力が低下します。

したがって、脾臓喪失は労働能力に影響するといえ、労働能力喪失が認められるべきです。

「8級」(基準値:労働能力喪失率45%)の後遺障害として評価されていた頃は、労働能力喪失を否定したり、基準値より低めの喪失率を認定する裁判例が多数ありました。しかし、等級改正により「13級」(基準値:労働能力喪失率9%)と評価されるようになってからは基準値どおりの労働能力喪失率をみとめる裁判例が多いです。

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